診療実績・業績

治療

内視鏡的切除(内視鏡的粘膜下層剥離術、ESD)についてはこれまで多くの症例を行ってきております。食道・胃・十二指腸および大腸腫瘍の内視鏡的切除(内視鏡的粘膜下層剥離術、ESD)は、2023年は146例でした。2009年7月から2023年12月までのESD加療の治療成績は一括完全切除率(取り残しがない一括切除)が胃腫瘍96.1%(928/966)、食道腫瘍100%(164/165)、大腸腫瘍97.1%(446/460)と良好な成績を収めております。治療結果は必ず1枚のサマリーを作成し、患者さんおよび紹介医の先生に分かりやすい病状説明を行っております(図1)。食道・胃・大腸がんの治療について最も重要な、常に根治度を優先した適応選択を心がけ、安全で満足いただける内視鏡治療を提供できるよう日々努力しております。週1回はESD症例の内視鏡・病理カンファ等を行い、症例を丁寧に見直して、診断力の向上に努めております。

(図1)1枚にまとめたESDサマリーを患者さんと紹介医に提供

さらに当科の特徴として炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の診断、治療に力を注いでいます。これまで多くの炎症性腸疾患症例を経験しており、難治例や重症例の受け入れを積極的に行っております。炎症性腸疾患の治療として内服のみならず血球除去療法や生物学的製剤を積極的に導入しております。
クローン病の診療には欠かせない小腸評価に関しましては、小腸造影検査・MR enterography・ダブルバルーン小腸内視鏡・カプセル内視鏡などのモダリティを用い、症例に応じて組み合わせて評価を行い、治療につなげています。また、小腸の狭窄病変に対して内視鏡的拡張術が可能な症例については積極的に拡張術を行っております。小腸出血や小腸腫瘍に対してもカプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡での診断・治療に力を注いでいます。
クローン病、ベーチェット病等の小腸病変を有する新規の症例については、小腸を含めた病勢の把握のため、サマリーを作成し、患者さんおよび紹介医の先生に分かりやすい病状説明を行っております(図2)。

(図2)

また、大腸内視鏡検査においては、2019年10月より新型細径大腸内視鏡(PCF-PQ260L)を導入し、挿入困難症例や高齢女性患者に対し、苦痛なく負担の少ない大腸検査を心がけております。
2023年より、新たに24時間胃食道内多チャンネルインピーダンス・pH測定検査を当科で導入しております(図3)。薬剤治療抵抗性のGERD患者に対する、食道内胃酸暴露時間の評価および胃酸弱流と症状の関連の評価に有用です(図4)。内視鏡検査にて明らかな逆流性食道炎を認めないものの、胃酸弱流によると考えられる逆流症状(胸焼け、胸痛、咳嗽など)を有するNERD患者の症状と胃酸逆流との関連、また薬剤抵抗性の逆流性食道炎患者の胃酸暴露時間を含めた再評価など、お困りの症例がありましたら、ぜひご紹介ください。

  • (図3)
  • (図4)

診療実績

2023年の年間検査・治療のおもな件数は下記のとおりです。

上部消化管内視鏡検査 約4,568件
下部消化管内視鏡 約1,872件
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 約146件
内視鏡的ポリープ切除術ないし粘膜切除術 約448件
小腸内視鏡・カプセル内視鏡検査 約47件
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査 約942件
超音波内視鏡検査 約502件
内視鏡的止血術 約98件
食道・胃静脈瘤内視鏡治療 約11件
胃瘻造設術 約20件
イレウス管挿入術 約28件

(消化器内科部長 上尾 哲也)

業績集

原著論文(和文原著)

  • 腫瘍長径6mmながらSM2、静脈侵襲陽性を認めた胃底腺粘膜型腺癌の1例
    照山直樹、上尾哲也、安部真琴、秋山英俊、九嶋亮治、村上和成
    臨消内科、38(12):1584-1590, 2023

  • 胃酸環境の変化が腫瘍の劇的な形態変化に寄与したと考える除菌後発見早期胃癌の1例
    下森雄太、上尾哲也、高橋晴彦、安部真琴、久保山雄介、村上和成
    臨消内科、38(4):471-476, 2023

  • NBI併用拡大観察似て評価しえた pT1a, Epstein-Barr virus関連リンパ球浸潤胃癌の1例
    池見雅俊、上尾哲也、高橋晴彦、和田蔵人、久保山雄介、村上和成
    臨消内科、38(2):227-232, 2023

学会発表(シンポジウム・ワークショップ)

  • Endoscopic findings of hematin represents strong gastric acidity (a single-center prospective observational study)
    Koki Yamanaka,Tetsuya Ueo,Makoto Abe,Kazunari Murakami
    【19th Korea-Japan H. pylori Joint Symposium】(2023年3月18日)

  • 内視鏡ヘマチン所見が示す胃内強酸環境に関する前向き試験
    山中昂紀、上尾哲也、照山直樹、坂東昌哉、下森雄太、本田俊一郎、久保山雄介、垣迫陽子、村上和成
    【第109回日本消化器病学会総会】(2023年4月7日)

  • 当院において臨床的に問題となった非HP非NSAIDs・難治性胃十二指腸潰瘍の検討(パネルディスカッション)
    照山直樹、上尾哲也、下森雄太、本田俊一郎、山中昂紀、坂東昌哉、久保山雄介、垣迫陽子、村上和成
    【第19回日本消化管学会総会 GI week 2023】(2023年2月3日)

  • 直径15mm以上のSSLに対するCS-EMRとESDの比較検討(ワークショップ)
    下森雄太、上尾哲也、照山直樹、本田俊一郎、村上和成
    【第115回日本消化器内視鏡学会九州支部例会】(2023年5月12日)

学会発表(主題以外)

  • 胃粘膜下層剥離術(ESD)にて加療を行った胃脂肪腫の5例の経験(一般演題)
    成安赳彦、上尾哲也、安部真琴、後藤尚希、蒔田貴大、下森雄太、木本喬博、秋山英俊、山元範昭、垣迫陽子、村上和成
    【第122回日本消化器病学会九州支部例会】(2023年11月24日)
  • 腫瘍長径6mmながらSM2、静脈侵襲陽性を認めた胃底腺粘膜型腺癌の1例(一般演題)
    照山直樹、上尾哲也、下森雄太、九嶋亮治、本田俊一郎、山中昂紀、坂東昌哉、久保山雄介、秦一敏、村上和成
    【第115回消化器内視鏡学会九州支部例会】(2023年5月12日)
  • 成人大腸重複腸管の一例(一般演題)
    成安赳彦、上尾哲也、安部真琴、秋山英俊、木本喬博、下森雄太、蒔田貴大、後藤尚希、本村充輝、成田竜一、岩城堅太郎、山元範昭、秦一敏、村上和成
    成人大腸重複腸管の一例(一般演題)
    【日本消化器病学会東北支部例会第216回例会】

研究会

  • 制酸剤投与により質的診断が可能となったH.pylori未感染粘膜におけるたこいぼびらん様病変の1例
    秋山英俊、上尾哲也、後藤尚希、蒔田貴大、成安赳彦、下森雄太、木本喬博、安部真琴、久保山雄介、福田昌英、村上和成
    【第29回九州胃と腸大会】(2023年8月5日)
  • 急性膵炎後仮性嚢胞に対しEUS-CDを2回施行するもいずれもステントが自然脱落した1例
    秋山英俊、本村充輝、成田竜一、後藤尚希、蒔田貴大、成安赳彦、下森雄太、木本喬博、安部真琴、上尾哲也、村上和成
    【大分DICフォーラム】(2023年8月31日)
  • 直径15mm以上のSSLに対するCS-EMRとESDの比較検討
    下森雄太、上尾哲也、後藤尚希、蒔田貴大、成安赳彦、木本喬博、秋山英俊、安部真琴、垣迫陽子、本村充輝、成田竜一、村上和成
    【第14回大分内視鏡セミナー】(2023年4月26日)
  • 便秘を契機に発見された成人大腸重複腸管の一例
    成安赳彦、上尾哲也、安部真琴、秋山英俊、木本喬博、下森雄太、蒔田貴大、後藤尚希、本村充輝、成田竜一、岩城堅太郎、山元範昭、秦一敏、村上和成
    便秘を契機に発見された成人大腸重複腸管の一例
    【第26回九州胃と腸大会】(2023年12月2日)
  • 当院におけるLEN-TACE療法の使用経験
    照山直樹、成田竜一、坂東昌哉、下森雄太、山中昂紀、本田俊一郎、安部真琴、上尾哲也、本村充輝、村上和成
    【第3回 LEN-TACE Academy in大分】(2023年3月1日)
  • 腫瘍長径6mmながらSM2、静脈侵襲陽性を認めた胃底腺粘膜型腺癌の1例
    照山直樹、上尾哲也、下森雄太、九嶋亮治、本田俊一郎、山中昂紀、坂東昌哉、久保山雄介、秦一敏、村上和成
    【第28回九州胃拡大内視鏡研究会】(2023年2月11日)

講演

  • 「H. pylori statusで変化する胃酸環境を考慮した胃上皮性腫瘍の診断」
    上尾哲也
    令和5年度 第14回大分内視鏡セミナー(2024年4月24日)
  • 「消化管がんのお腹を切らない内視鏡治療」
    上尾哲也
    健康講座(2023年9月25日)

座長、司会

  • 「九州胃と腸大会」第一部司会
    上尾哲也
    九州胃と腸大会(2023年12月2日 福岡)