診療実績・業績

治療

内視鏡的切除（内視鏡的粘膜下層剥離術、ESD）についてはこれまで多くの症例を行ってきております。食道・胃・十二指腸および大腸腫瘍の内視鏡的切除（内視鏡的粘膜下層剥離術、ESD）は、2024年は162例でした。2009年7月から2024年12月までのESD加療の治療成績は一括完全切除率（取り残しがない一括切除）が胃腫瘍96.3%(1025/1064)、 食道腫瘍99.5%（183/184）、 大腸腫瘍96.8%（489/505）と良好な成績を収めております。治療結果は必ず1枚のサマリーを作成し、患者さんおよび紹介医の先生に分かりやすい病状説明を行っております（図１）。食道・胃・大腸がんの治療について最も重要な、常に根治度を優先した適応選択を心がけ、安全で満足いただける内視鏡治療を提供できるよう日々努力しております。週１回はESD症例の内視鏡・病理カンファ等を行い、症例を丁寧に見直して、診断力の向上に努めております。

 

（図1）1枚にまとめたESDサマリーを患者さんと紹介医に提供

さらに当科の特徴として炎症性腸疾患（潰瘍性大腸炎・クローン病）の診断、治療に力を注いでいます。これまで多くの炎症性腸疾患症例を経験しており、難治例や重症例の受け入れを積極的に行っております。炎症性腸疾患の治療として内服のみならず血球除去療法や生物学的製剤を積極的に導入しております。

クローン病の診療には欠かせない小腸評価に関しましては、小腸造影検査・MR enterography・ダブルバルーン小腸内視鏡・カプセル内視鏡などのモダリティを用い、症例に応じて組み合わせて評価を行い、治療につなげています。また、小腸の狭窄病変に対して内視鏡的拡張術が可能な症例については積極的に拡張術を行っております。小腸出血や小腸腫瘍に対してもカプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡での診断・治療に力を注いでいます。

クローン病、ベーチェット病等の小腸病変を有する新規の症例については、小腸を含めた病勢の把握のため、サマリーを作成し、患者さんおよび紹介医の先生に分かりやすい病状説明を行っております（図２）。

（図2）

また、大腸内視鏡検査においては、2019年10月より新型細径大腸内視鏡（PCF-PQ260L）を導入し、挿入困難症例や高齢女性患者に対し、苦痛なく負担の少ない大腸検査を心がけております。

 

2023年より、新たに24時間胃食道内多チャンネルインピーダンス・ｐH測定検査を当科で導入しております（図３）。薬剤治療抵抗性のGERD患者に対する、食道内胃酸暴露時間の評価および胃酸弱流と症状の関連の評価に有用です（図４）。内視鏡検査にて明らかな逆流性食道炎を認めないものの、胃酸弱流によると考えられる逆流症状（胸焼け、胸痛、咳嗽など）を有するNERD患者の症状と胃酸逆流との関連、また薬剤抵抗性の逆流性食道炎患者の胃酸暴露時間を含めた再評価など、お困りの症例がありましたら、ぜひご紹介ください。

消化器内科　部長　上尾　哲也

  • （図3）
  • （図4）

診療実績

2023年の年間検査・治療のおもな件数は下記のとおりです。

上部消化管内視鏡検査 約4,568件
下部消化管内視鏡 約1,872件
内視鏡的粘膜下層剥離術（ESD） 約146件
内視鏡的ポリープ切除術ないし粘膜切除術 約448件
小腸内視鏡・カプセル内視鏡検査 約47件
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査 約942件
超音波内視鏡検査 約502件
内視鏡的止血術 約98件
食道・胃静脈瘤内視鏡治療 約11件
胃瘻造設術 約20件
イレウス管挿入術 約28件

（消化器内科部長　上尾　哲也）

業績集

原著論文（和文原著）

  • 制酸剤投与による質的診断が可能になった, H. pylori未感染粘膜における、たこいぼびらん様病変の１例
    秋山英俊、上尾哲也、安部真琴、木本喬博、成安赳彦、村上和成

    臨消内科、39(7)，832-837, 2024

  • 青銅色大腸粘膜―山梔子（サンシシ）による腸間膜静脈硬化症―
    上尾哲也、安部真琴、 秋山英俊、 垣迫陽子、山元範昭、村上和成

    消内視鏡，36(6):895-899, 2024

学会発表（シンポジウム・ワークショップ）

  • The relationship between gastric hyperacidity and endoscopic findings of the Kyoto Classification of Gastritis.

    Hidetoshi Akiyama，Tetsuya Ueo，Kazunari Murakami

    【第107回日本内視鏡学会総会】（2023年5月30日）

  • ERCP困難症例に対する膵癌術前ドレナージとしてのEUS-CDS

    東祥史、佐上亮太、広島康久、遠藤美月、内田宅郎、小川竜、福田健介、小坂聡太郎、平下有香、平下禎二郎、水上一弘、岡本和久、村上和成

    【第123回日本消化器病学会　九州支部例会】2024年6月21日

  • 当院における膵周囲液体貯留に対する内視鏡治療の検討

    東祥史、佐上亮太、広島康久、島田隆一、水上一弘

    【第118回日本消化器内視鏡学会　九州支部例会】2024年11月16日

学会発表（主題以外）

  • 問診が診断の鍵となったJPS/HHT 合併症候群の１症例

    平賀大輝、福田昌英、堤康志郎、淀優花、寺師尚平、小坂聡太郎、平下有香、 高橋晴彦、福田健介、 小川竜、水上一弘、兒玉雅明、村上和成

    【第123回日本消化器病学会九州支部例会】（2024年6月21日）

  • 便潜血陽性を契機とした下部消化管内視鏡検査で診断に至ったidiopathic ileocolonic varicesの一例（専攻医発表）

    平賀大輝、上尾哲也、木本喬博、山田康成、南部生妃、淀怜赳、秋山英俊、安部真琴、高橋晴彦、本村充輝、成田竜一、村上和成

    【第124回日本消化器病学会九州支部例会】（2024年11月15日）

  • 腸上皮化生のWOSは胃内中性環境を示唆する最も有用な所見である

    -胃炎の京都分類に基づく内視鏡所見と胃内酸環境の検討(事後解析研究)-

    （一般演題）上尾 哲也、秋山英俊、安部真琴、秋山英俊、村上和成

    【第107回日本消化器内視鏡学総会】 (2024年5月30日)

  • バレット食道腺癌ESD後リンパ節転移との鑑別に苦慮したが、異物肉芽腫が強く疑われた１例

    淀怜赳、上尾哲也、平賀大輝、木本喬博、秋山英俊、安部真琴、髙橋晴彦、因幡和美、水上一弘、村上和成

    【第124回日本消化器病学九州支部例会, 第118回日本消化器内視鏡学九州支部例会】 (2024年6月21日)

  • 胃炎の京都分類に基づく内視鏡所見と強酸環境との関係（一般演題）

    秋山英俊、上尾哲也、安部真琴、村上和成

    【第123回消化器内視鏡学会九州支部例会】 (2024年6月21日)

  • 急激な経過を辿った胎児消化管類似癌（adenocarcinoma with enteroblastic differentiation; ACED）の一例

    木本喬博、上尾 哲也、秋山英俊、安部真琴、多田和裕、成安赳彦、淀怜赳、後藤尚希、山元範昭、村上和成

    【第123回日本消化器病学九州支部例会, 第117回日本消化器内視鏡学九州支部例会】 (2024年6月21日)

  • 当院における切除範囲が幽門輪にかかる腫瘍性病変に対するEndoscopic submucosal dissection(ESD)の検討

    木本 喬博、上尾哲也、秋山英俊、安部真琴、成安赳彦、淀怜赳、後藤尚希、成田竜一、本村充輝、蒔田貴大、南部生妃、村上和成

    【第123回日本消化器病学九州支部例会, 第117回日本消化器内視鏡学九州支部例会】 (2024年6月21日)

  • 食道扁平上皮癌との鑑別を要した腫瘍径11mmの食道乳頭腫の一例（専攻医発表）

    淀怜赳、上尾哲也、後藤尚希、成安赳彦、木本喬博、秋山英俊、安部真琴、南部生妃、蒔田貴大、本村充輝、成田竜一、垣迫陽子、山元範昭、田邉寛、村上和成

    【第117回日本消化器内視鏡学会九州支部例会】(2024年6月21日)

  • バレット食道腺癌ESD後リンパ節転移との鑑別に苦慮したが，異物肉芽腫が強く疑われた一例（専攻医発表）

    淀怜赳、上尾哲也、平賀大輝、木本喬博、秋山英俊、安部真琴、髙橋晴彦、本村充輝、因幡和美、村上和成、水上一弘

    【第118回日本消化器内視鏡学会九州支部例会】(2024年11月15日)

  • 便潜血陽性を契機とした下部消化管内視鏡検査で診断に至ったidiopathic ileocolonic varicesの一例（専攻医発表）

    平賀大輝、上尾哲也、木本喬博、山田康成、南部生妃、淀怜赳、秋山英俊、安部真琴、髙橋晴彦、本村充輝、成田竜一、水上一弘、村上和成

    【第118回日本消化器内視鏡学会九州支部例会】(2024年11月15日)

  • 腸上皮化生のWOSは胃内中性環境を示唆する最も有用な所見である

    -胃炎の京都分類に基づく内視鏡所見と胃内酸環境の検討(事後解析研究)-

    （一般演題）上尾 哲也、秋山英俊、安部真琴、秋山英俊、村上和成

    【第123回日本消化器病学九州支部例会, 第117回日本消化器内視鏡学九州支部例会】 (2024年6月21日)

  • 薬剤中止後の内視鏡的および組織学的長期経過を追えた山梔子含有漢方薬長期使用による腸間膜静脈硬化症の3例（研修医発表）

    河野崇史、上尾哲也、秋山英俊、後藤尚希、南部生妃、淀怜赳、蒔田貴大、成安赳彦、木本喬博、安部真琴、本村充輝、成田竜一、垣迫陽子、村上和成

    【第123回日本消化器病学九州支部例会/第117回日本消化器内視鏡学九州支部例会】 (2024年6月21日)

研究会

  • VEC pattern が目立った除菌後発見胃癌の１例

    秋山英俊、上尾哲也、安部真琴、後藤尚希、淀怜赳、成安赳彦、木本喬博、南部生妃、蒔田貴大、山元範昭、垣迫陽子、村上和成

    【第30回九州胃と腸大会】(2024年3月9日)

  • 急激な経過を辿った胎児消化管類似癌（adenocarcinoma with enteroblastic differentiation; ACED）の一例

    木本喬博、上尾哲也、秋山英俊、安部真琴、多田和裕、成安赳彦、淀怜赳、後藤尚希、山元範昭、村上和成

    【第15回　大分内視鏡セミナー】（2024年4月17日）

講演

  • スキリージ講演会 in 大分　

    髙橋晴彦

    パネリスト（2024年9月11日）

  • 「IBDにおけるSDMの実際」

    髙橋晴彦

    エンタイビオSC講演会 in 大分（2024年9月18日）
  • 「リンヴォック®️の立ち位置を考える　-当科の使用経験をふまえて–」

    髙橋晴彦

    AbbVie Immunology forum（2024年10月16日）

  • 「早期胃癌拡大内視鏡診断の進歩と現状；「2019早期胃癌の内視鏡診断ガイドラン」を踏まえて」

    上尾哲也

    第 37回日本消化器内視鏡学学会九州セミナー（WEB開催　2024年1月11〜25日）

  • 「当科における消化管内視鏡治療の現状とその取り組みについて」

    上尾哲也

    大分赤十字病院　水曜会 (2024年1月20日)

  • 「消化器内科の立場から鑑みる胃・十二指腸潰瘍への提言」

    上尾哲也

    循環器セミナーin 大分 (2024年12月4日)

  • 「長寿社会における消化管の内視鏡治療〜癌のESD治療から逆流性食道炎の治療まで〜」

    上尾哲也

    健康講座 (2025年1月20日)

座長、司会

  • 第123回日本消化器病学会九州支部例会、第117回日本消化器内視鏡学会九州支部例会　［胃・十二指腸1］司会
    上尾哲也
    第123回日本消化器病学会九州支部例会,、第117回日本消化器内視鏡学会九州支部例会（2024年6月21日北九州）　専攻医発表
  • 第124回日本消化器病学会九州支部例会、第118回日本消化器内視鏡学会九州支部例会　［胃・十二指腸2］司会
    上尾哲也
    第124回日本消化器病学会九州支部例会,、第118回日本消化器内視鏡学会九州支部例会（2024年11月15日鹿児島）　専攻医発表

受賞、その他

  • 医学博士学位取得
    安部真琴

    学位論文「Endoscopic finding of hematin represents strong gastric acidity」Abe M, Ueo T, Takahashi H, Akiyama H, Togo K, Fukuda M, Kakisako Y, Murakami K.  Ann Gastroenterol, 35(4):362-367.　 (大分大学、2024年3月24日)

  • 専修医奨励賞受賞
    平賀大輝

    第123回日本消化器内視鏡学会九州支部例会「問診が診断の鍵となったJPS/HHT 合併症候群の１症例」

  • 専修医奨励賞受賞

    淀 怜赳　

    第118回日本消化器内視鏡学会九州支部例会「バレット食道腺癌ESD後リンパ節転移との鑑別に苦慮したが，異物肉芽腫が強く疑われた一例」